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東京地方裁判所 平成8年(ワ)933号 判決

原告 内山賢一

原告 豊泉産業株式会社

右代表者代表取締役 豊泉芳三

右両名訴訟代理人弁護士 齋藤雅弘

同 清水聡

被告 破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブ破産管財人 河野玄逸

被告 破産者秩父開発株式会社破産管財人 河野玄逸

右両名訴訟代理人弁護士 川村英二

同 曽我幸男

被告 野間口洋二

右訴訟代理人弁護士 山下清兵衛

主文

一  原告内山賢一と被告破産者秩父開発株式会社破産管財人河野玄逸との間で、同原告が破産者秩父開発株式会社に対し、金一三五〇万円の破産債権を有することを確定する。

二  原告豊泉産業株式会社と被告破産者秩父開発株式会社破産管財人河野玄逸との間で、同原告が破産者秩父開発株式会社に対し、金二三〇〇万円の破産債権を有することを確定する。

三  被告野間口洋二は、原告内山賢一に対し、金一三五〇万円及びこれに対する平成八年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告野間口洋二は、原告豊泉産業株式会社に対し、金二三〇〇万円及びこれに対する平成八年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  原告らの被告破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブ破産管財人河野玄逸に対する各請求及び被告破産者秩父開発株式会社破産管財人河野玄逸に対するその余の各請求並びに被告野間口洋二に対するその余の各請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、原告らと被告破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブ破産管財人河野玄逸との間で生じた費用は原告らの負担とし、原告らと被告破産者秩父開発株式会社破産管財人河野玄逸との間で生じた費用は、これを五分し、その四を同被告の負担とし、その余を原告らの負担とし、原告らと被告野間口洋二との間で生じた費用は、これを五分し、その四を同被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。

七  この判決は、第三項及び第四項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  原告内山賢一と被告破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブ破産管財人河野玄逸との間で、同原告が破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブに対し、金二五〇万円の破産債権を有することを確定する。

二  原告豊泉産業株式会社と被告破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブ破産管財人河野玄逸との間で、同原告が破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブに対し、金四一二万円の破産債権を有することを確定する。

三  原告内山賢一と被告破産者秩父開発株式会社破産管財人河野玄逸との間で、同原告が破産者秩父開発株式会社に対し、金一六〇〇万円の破産債権を有することを確定する。

四  原告豊泉産業株式会社と被告破産者秩父開発株式会社破産管財人河野玄逸との間で、同原告が破産者秩父開発株式会社に対し、金二七〇〇万円の破産債権を有することを確定する。

五  被告野間口洋二は、原告内山賢一に対し、金一六〇〇万円及びこれに対する平成八年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告野間口洋二は、原告豊泉産業株式会社に対し、金二七〇〇万円及びこれに対する平成八年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、かつて別紙記載のゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)を経営していた破産者株式会社ザ・フォーラムカントリークラブ(以下「フォーラム」といい、必要に応じ「破産者フォーラム」という。)とゴルフクラブの会員契約を締結して入会金及び預託金を支払い、右ゴルフ場施設を利用してきた原告らが、

1  同クラブの会員数が募集条件として示された人数及び同クラブの適正会員数をはるかに超えて増加し、正会員として満足に右施設を利用する機会が喪失したことが債務不履行に当たることを理由に、フォーラム並びに右クラブの営業権を譲り受けた破産者秩父開発株式会社(以下「秩父開発」といい、必要に応じ「破産者秩父開発」という。)及びインタータッチ株式会社(以下「インタータッチ」という。)に対し、前記各入会契約を解除し、これによりフォーラム及び秩父開発に対し、その入会金及び預託金の各返還請求権を有するに至ったとして、その支払を求める本件訴訟を提起したところ、その後フォーラム及び秩父開発について各破産手続が開始され、その各手続においてこれを破産債権としてそれぞれ届け出たところ、各破産管財人から異議が出された(ただし、フォーラムの破産手続においては、預託金分については異議が出されなかった。)ため、被告破産者フォーラム破産管財人河野玄逸(以下「被告フ社管財人」という。)との間で右各入会金相当額の破産債権を有すること、及び被告破産者秩父開発破産管財人河野玄逸(以下「被告秩父管財人」という。)との間で、右各入会金及び預託金相当額の破産債権を有することの確定を求め、

2  フォーラムの代表取締役であった被告野間口洋二(以下「被告野間口」という。)に対し、同被告が代表取締役の職務を行うについての悪意又は重過失により、原告らに入会金及び預託金の相当額の損害を与えたとし、商法二六六条の三に基づき、右損害の賠償を求める

事案である。

一  判断の前提となる事実(かっこ書き内に認定に用いた証拠を掲げ、又は「弁論の全趣旨」と記した事実以外は、争いがない。)

1  当事者及び関係者

(一)  フォーラム、秩父開発及びインタータッチは、いずれもゴルフ場の経営などを主たる目的とする株式会社である。

なお、インタータッチの商号は、従前「株式会社第三企画事業本部」であったが、平成九年四月一五日、現在のもの(インタータッチ株式会社)に変更された。

(二)  フォーラムは、従前本件訴訟の被告であったが、平成八年九月一八日午後三時三〇分、東京地方裁判所において、破産決定を受け、弁護士河野玄逸が破産管財人に選任された。

(三)  秩父開発は、従前本件訴訟の被告であったが、平成九年六月一六日午前一一時三〇分、東京地方裁判所において、破産決定を受け、弁護士河野玄逸が破産管財人に選任された。

(四)  被告野間口は、フォーラム設立の昭和六〇年六月一七日からその代表取締役を務め、平成七年九月二五日に退任登記がされた者である。

(五)  河野博晶(以下「河野」という。)は、秩父開発設立の平成五年一一月二二日から平成六年九月一〇日まで同社の代表取締役であった者である。

2  ゴルフクラブ会員契約

(一)  原告内山賢一(以下「原告内山」という。)は、フォーラムとの間で、昭和六二年一二月一日、フォーラムが経営していたザ・フォーラムカントリークラブと称する本件ゴルフ場の利用等を目的とするザ・フォーラムカントリークラブ(以下「本件クラブ」という。)の個人正会員になる旨の会員契約(以下「本件契約(一)」という。)を締結し、フォーラムに対し、入会金二五〇万円及び預託金一三五〇万円の合計金一六〇〇万円を支払った(甲一の一及び二、弁論の全趣旨)。

(二)  原告豊泉産業株式会社(以下「原告会社」という。)は、フォーラムとの間で、平成元年一〇月二五日、(一)と同内容のゴルフ会員契約(以下「本件契約(二)」という。)を締結し、フォーラムに対し、入会金四一二万円(消費税一二万円を含む。)及び預託金二三〇〇万円の合計金二七一二万円を支払った(甲二の一及び二、弁論の全趣旨)。

3  本件ゴルフ場の経営体制等

(一)  フォーラムは、秩父開発に対し、平成五年一一月ころ、本件ゴルフ場の営業権(以下「本件営業権」という。)を譲渡した(以下、この譲渡を「本件譲渡(一)」という。)。

秩父開発は、その後、「ザ・フォーラムカントリークラブ」の名称を使用して本件ゴルフ場の営業に当たった(甲八、九、弁論の全趣旨)。

(二)  さらに、本件営業権は、平成七年一〇月ころ、フォーラム及び秩父開発からインタータッチに譲渡された(以下、この譲渡を「本件譲渡(二)」という。)。

なお、本件ゴルフ場の名称は、平成八年五月から「セントラルヒルズゴルフクラブ」と変更された。

4  その間の経緯

フォーラム及び秩父開発は、平成五年一二月から平成六年三月までの間、旧東京協和信用組合(以下「東京協和」という。)から一二億六〇〇〇万円の融資を受け、その際、同信用組合に対し、未発行の本件ゴルフクラブの会員権二百数十枚を担保に供するなどした。

5  その後の経緯

フォーラムは、平成七年三月三〇日、二度目の手形不渡りを出し、同年四月四日、銀行取引停止処分を受け、事実上倒産した。

6  解除の意思表示

フォーラム及び秩父開発に対し、いずれも平成八年二月一九日(前記のとおり、フォーラム及び秩父開発について各破産決定がされる前であり、いずれも本件訴訟の被告であった日)に送達された本件訴状により、原告内山は本件契約(一)を、原告会社は本件契約(二)を、優先的使用権を確保する義務の履行不能を理由に解除する旨の意思表示をした。

また、原告らは、インタータッチに対しても、同日、同旨の契約解除の意思表示をした。

7  破産手続における債権届出と異議

原告らは、フォーラム及び秩父開発を被告として、本件契約(一)及び本件契約(二)の解除に係る入会金及び預託金の返還をそれぞれ請求したが、その後開始された破産者フォーラムの破産手続において右の債権を破産債権として届け出たところ、平成九年三月一二日の債権調査期日に、被告フ社破産管財人から右各入会金部分について異議が出され、また、その後開始された破産者秩父開発の右の債権を破産債権として届け出たが、平成一〇年三月一九日の債権調査期日に、被告秩父開発破産管財人からその全額について異議が出され、本件債権確定訴訟に至った。

二 争点

1  争点1 本件契約(一)及び本件契約(二)の債務不履行を理由とする各解除の効力(解除原因の存否及びこれらの契約が解除された場合の原状回復義務の範囲の問題を含む。)

2  争点2 秩父開発によるフォーラムの原告らに対する本件契約(一)及び本件契約(二)上の債務についての併存的債務引受けの成否

3  争点3 被告野間口の商法二六六条の三に基づく損害賠償責任の成否

三 争点に関する当事者の主張

1  争点1について

(一)  原告ら

(1)  原告らは、フォーラム及び秩父開発に対し、本件契約(一)及び本件契約(二)に基づき、本件ゴルフ場を優先的に利用しうる権利を有していたところ、一八ホールの本件ゴルフ場の適正会員数は、一般に八〇〇名から一二〇〇名程度であり、フォーラムも、原告らに対し、本件クラブへの入会を勧誘した際、その会員数について一〇〇〇名の限定募集とする旨説明したから、フォーラム及び秩父開発は、原告らの優先的利用権の行使を阻害しないよう一〇〇〇名を基準とした適正会員数に限定すべき義務があった。

(2)  にもかかわらず、本件クラブの会員数は、適正会員数をはるかに超える六〇〇〇名に達し、原告らの優先的利用権は侵害された。

また、被告野間口及び河野は、金融機関からの借入れに際し、未発行会員権を担保に供したため、大量の会員権が市場に出回り、本件クラブの会員権が名義書換料一〇〇万円を含め一二〇万円、八〇万円などの価格で販売されるなどの異常事態を生じており、会員数が激増することが明らかである。

さらに、現在、本件ゴルフ場のプレー予約の電話はほとんどつながらず、つながっても三か月先まで予約で一杯の状況であり、原告らは、会員として優先的に本件ゴルフ場においてプレーすることが不可能な状態にある。

(3)  したがって、被告野間口及び河野による大量の会員募集並びに会員権の大量発行及び流出により、フォーラム及び秩父開発の原告らに本件ゴルフ場を優先的に利用させる債務は、履行不能となった。

(4)  よって、フォーラムは、原告内山に対し、本件契約(一)の解除に基づき、同原告が右契約に際して支払った入会金二五〇万円を、原告会社に対し、本件契約(二)の解除に基づき、同原告が右契約に際して支払った入会金四〇〇万円をそれぞれ支払う義務がある。

(二)  被告フ社管財人及び被告秩父管財人

争う。ゴルフ場の預託金会員制クラブにおける入会金は、ゴルフクラブに入会するために要する費用であり、一定の預託期間経過後に返還されるべき預託金とは性質を異にし、また、継続的契約の解除には遡及効がないから、会員が契約解除等により退会したとしても、ゴルフ場が開設されなかったような例外的な場合を除き返還の対象とはならない。

本件ゴルフ場は、平成元年の開場後少なくとも平成五年までは会員は問題なくプレーすることができる状況にあり、原告らは、数年間にわたり本件ゴルフ場を利用することができたから、原告らが支払った各入会金は、返還の対象とはならない。

2  争点2について

(一)  原告ら

(1)  (併存的債務引受)

本件譲渡(一)は、これにより名義変更料を徴収する以外の営業上の権利が全て秩父開発に移転し、秩父開発が売上金の収益、年会費の収入等を得る権利など本件クラブに係る権利義務を承継し、したがってまた、本件契約(一)及び本件契約(二)上の権利義務を承継した。

これにより、フォーラムは、秩父開発に対し本件営業権を重畳的に譲渡したものであり、他方、秩父開発は、本件クラブに係るフォーラムの債務については、併存的債務引受を行ったものである。

なお、フォーラムと秩父開発間の本件譲渡(一)に係る営業譲渡契約書(甲一八)は、フォーラムを甲、秩父開発を乙とし、その四条において、「甲が営業譲渡の前日である平成5年12月14日までに負担している責務については、甲が全ての責任を負うものとし、乙に対して請求があった場合は甲の責任において処理するものとする。」と規定されているが、その後半部分は、対内的な責任分担にかかわらず、フォーラムが本件譲渡(一)の前日までに負担した債務につき、秩父開発が対外的に責任を負う場合を想定したものであり、秩父開発は、本件譲渡(一)に伴い、それ以前にフォーラムが負担した債務を対外的に負担せざるを得ないことを認識し、対外的には重畳的債務引受となることを規定したものと解すべきである。

(2)  (商法二六条の類推適用)

秩父開発は、本件譲渡(一)後、本件ゴルフ場の経営に関し「ザ・フォーラムカントリークラブ」の名称を続用した。

商号を続用する営業譲受人に弁済義務を課する商法二六条一項の趣旨は、商号が続用される場合には、営業上の債権者は、営業譲渡の事実を知らず、譲受人が債務者であり、あるいは譲受人が債務引受けをしたと考え、営業譲渡人に対する債権保全措置を講ずる機会を失するおそれが大きいこと等にかんがみ、債権者を保護することにあるから、続用されたのが商号そのものでなくとも、営業上使用され、営業の主体を表示する機能を果たしている名称である場合には、同条を類推し、右名称を続用した譲受人の弁済義務を認めるべきである。

ゴルフクラブの名称は、商号そのものでないが、ゴルフ場の経営については、経営主体ではなく当該クラブの名称が使用されるのが一般的であり、これによって営業の主体が表示されるものと一般に理解されており、その会員は、当該クラブの名称を使用する者に対して権利を有すると考えているから、ゴルフクラブの名称を続用した営業譲受人については、同項の類推適用による責任が認められる。

したがって、秩父開発は、同項に基づき、本件契約(一)及び本件契約(二)上の債務を負う。

(二)  被告秩父管財人

争う。

なお、秩父開発は、「ザ・フォーラムカントリークラブ」の名称を使用して本件ゴルフ場の営業を行っていたが、本件譲渡(二)後は右営業を行っていない。

3  争点3について

(一)  原告ら

(1)  被告野間口は、フォーラムの代表取締役として、本件ゴルフ場の建設運営のような大規模で専門的知識と多額の資金を要し、多数の者の利害に係る事業を行うについて、その成否につき事前に十分調査研究し、建設運営資金の調達につき客観的で合理的な裏付けをもった計画を立て、かつ、右計画に基づいて堅実な運営を行うべき義務があるにもかかわらずこれを怠り、無計画で過剰な投資を行った。

ア 本件ゴルフ場の開発

被告野間口は、客観的で合理的な裏付けのある事業計画もないまま、本件ゴルフ場の開発に着手し、大松物産から本件ゴルフ場の土地買収資金一八億円を年二四パーセントの高利で借り入れた上、土地の買収業務を担当した睦商事株式会社(以下「睦商事」という。)の土地買収の都度、大松物産から融資を受けると同時に、土地の所有名義を変更してこれを担保提供する手法を用いた。

イ 過剰投資

(ア) フォーラムは、平成元年ころ開発に着手した群馬県吾妻郡高山村でゴルフ場(以下「群馬ゴルフ場」という。)に二〇億円ないし三〇億円もの金員を借り入れて投資したが、平成五年ころ撤退し、静岡県下田でのゴルフ場開発にも約一七億円又は一八億円を借り入れて投資した。

いずれも開発担当会社は、別会社であるが、借入金の債務者はフォーラムである。

(イ) また、フォーラムは、平成元年前後、アメリカ合衆国ロスアンジエルスでのゴルフ場開発に三五億円を投資し、その資金を全て借入金で賄ったほか、山口敏夫から「ニューヨークで投資を失敗したので、引き継いでくれ。」と要請を受け、いわゆるバブル経済崩壊後の平成四年、同国ニューヨークのゴルフ場マンハッタンウッズクラブの開発に借入金四〇億円を投資した。

(ウ) さらに、フォーラムは、本件ゴルフ場開発直前、東相模ゴルフクラブの開発を途中から引き継ぎ、三〇〇人から四〇〇人程度の会員を募集をしながら、三、四年後には資金不足のため開発から撤退した。

ウ 裏証券の発行

被告野間口は、金融機関から求められるままに、その数を把握せずに、かつ、担保流れとなった場合には名義変更料も取らずにその登録を認める趣旨で、担保として本件クラブの会員権を発行し交付した。その結果、少なくとも八〇〇〇口以上の会員権が発行された。

エ 不当な利息の支払

フォーラムは、群馬ゴルフ場の開発に多額の資金を流失させるなどし、資金繰りが平成四年九月ころから急激に悪化したことから、被告野間口は、旧東京協和信用組合及び旧安全信用組合(以下、両組合を併せて「二信組」という。)から融資を得るため、同年九月から平成六年一二月までの間、いわゆる金融ブローカーなどから二信組に一八〇件にのぼる導入預金の疑いのある預金をさせ、その見返りとして二五億円もの裏利息を支払った。

(2)  そのため、フォーラムの経営は一層逼迫し、平成七年四月に銀行取引停止処分を受けた。

(3)  秩父開発は、フォーラムが二信組から更に融資を受けるために設立され、秩父開発を通して迂回融資が実行され、フォーラムの経営破綻に伴い、秩父開発の経営も破綻した。

(4)  被告野間口は、河野と共謀の上、二信組から融資を受けるために未発行の本件クラブの会員権数百枚をその担保として差し入れ、他の金融機関からの借入れに際しても未発行の本件クラブの会員権を担保として差し入れて大量の会員権を流出させたため、原告らの本件ゴルフ場の優先的利用権は内実を失った。

(5)  したがって、被告野間口は、フォーラムについての代表取締役としての業務執行につき、悪意をもって原告らに損害を加えたものであり、原告らに対し、商法二六六条の三に基づき、原告らが被った損害を賠償する義務を負う。

(6)  (被告野間口の主張に対する反論)

不動産開発関連融資規制がされたとしても、被告野間口が建設運営資金の調達につき客観的で合理的な裏付けをもった計画を確立し、堅実な運営を行っていれば、フォーラムの破綻は避け得たから、その責任を大蔵省や日銀の金融政策に転嫁することは失当である。また、景気の変動は、経済人としてその責任において対処すべき事項である。

(二)被告野間口

(1)  フォーラムの経営悪化は、不動産価格が下落し、金融政策による不動産開発関連融資規制のため、不動産やゴルフ会員権の流通が著しく困難となったためであり、被告野間口に経営者としての法的責任はない。

(2)  また、会員権の発行によって会員のゴルフ場施設についての優先的利用権が阻害されることはない。

4  原告の請求のまとめ

(一)  原告内山は、

(1)  被告フ社管財人との間で、同原告が破産者フォーラムに対し、二五〇万円の破産債権を有することの確定

(2)  被告秩父管財人との間で、同原告が破産者秩父開発に対し、一六〇〇万円の破産債権を有することの確定

(3)  被告野間口に対し、商法二六六条の三に基づき、入会金及び預託金の合計額相当の損害一六〇〇万円及びこれに対する損害発生の後の日であり、訴状送達の日の翌日である平成八年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払

(二)  原告会社は、

(1)  被告フ社管財人との間で、同原告が破産者フォーラムに対し、四一二万円の破産債権を有することの確定

(2)  被告秩父管財人との間で、同原告が破産者秩父開発に対し、二七〇〇万円の破産債権を有することの確定

(3)  被告野間口に対し、商法二六六条の三に基づき、入会金及び預託金の合計額相当の損害二七〇〇万円及びこれに対する損害発生の後の日であり、訴状送達の日の翌日である平成八年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払

をそれぞれ求める。

第三争点に対する判断

一  本件クラブは、いわゆる預託金制会員組織であり、本件ゴルフ場の経営者と独立して権利義務の主体となるものではなく、ゴルフ会員権を巡る法律関係は、右経営者と各会員との間の会員契約及び本件クラブの会則によって規律されるものと解され、したがって、原告内山とフォーラム間については本件契約(一)及び右会則、原告会社とフォーラム間については本件契約(二)及び右会則によって律されることになる。

二  争点1及び争点2について

1(一)  証拠(甲三、四)及び弁論の全趣旨によれば、フォーラムは、本件ゴルフクラブ会員を募集するについて、そのパンフレット等に最終正会員の人数が一〇〇〇名である旨表示したことが認められるが、原告らに対し、本件契約(一)及び本件契約(二)において本件クラブの会員の会員数を一〇〇〇名とすることを約したとは認められず、正会員数を右数にとどめることが本件契約(一)及び本件契約(二)上のフォーラムの債務であるとはいい難い。

また、被告野間口本人尋問の結果(以下、場合により「被告野間口供述」ということがある。)中には、爾後本件クラブの理事会の了解を得て一八〇〇名に増員した旨、本来の募集方法で一五〇〇人ないし一六〇〇人程度の正会員を集めた旨の供述部分がある。

(二)しかしながら、ゴルフクラブの会員数は、予約の難易、ゴルフ場の混雑度やプレー時の余裕の有無、会員の質等を左右し、これらの要素が相まって会員権の価値等が決定されるものであるから、ゴルフクラブに入会しようとする者にとっては、その会員数がどの程度のものと想定されているかは重要な考慮要素であり、他方、証拠(甲四、五、被告野間口本人)及び弁論の全趣旨によれば、フォーラムにおいても、本件ゴルフ場について世界的に有名なプロゴルフプレーヤーがコース設計と監修に当たり、一流企業が設計、施工、監修等を担当したことを喧伝し、一〇〇〇名程度の会員数に限定することによって本件クラブの質、レベル等をいわゆるセールスポイントとする趣旨があったことが認められるから、フォーラムは、本件契約(一)及び本件契約(二)に関し、会員数を一〇〇〇名又はこれを大幅には上回らない範囲に止めるべき義務を負うものと解するのが相当である。

(三)  しかるところ、証拠(甲一二、一三、乙イ一、被告野間口本人)及び弁論の全趣旨によれば、平成五年ころ以降、追加の会員権が販売され、平成七年ころからは、休日の予約なしのプレーが困難になったのみならず、予約受付の電話がなかなかつながらず、つながったとしてもキャンセル待ちとなることが多くなったこと、ゴルフ場のメンテナンスやサービスが低下したこと、原告会社の代表者豊泉芳三は、現場の職員が会員数が三〇〇〇ないし四〇〇〇人であると話すのを聞いたこと、被告フ社破産管財人の同社の破産事件における破産債権届出について、平成九年三月一〇日時点の集計完了分として約三四五〇件の預託金債権の届出がされたことが認められる。これらの事実に、被告野間口自身、その本人尋問において、二〇〇〇枚以上の会員権を金融機関からの融資の担保として提供し、また、本件譲渡(一)後も会員権販売に傾注したことを自認する供述をしていることを併せ勘案すると、本件解除の意思表示がされた平成八年二月一九日ころには、本件クラブの会員数は、数千名に及んでいたことが認められる。

もっとも、被告野間口は、その本人尋問において、追加発行した会員権の中には平日会員など正会員以外のものも含まれている旨供述するほか、前記のとおり、理事会で正会員数を一八〇〇名と変更した旨、本件ゴルフ場は都心からやや遠方にあるため会員のプレーに支障はない旨の各供述をする。

しかしながら、一・八倍にも及ぶ会員数の変更が合理的なものであるかについては疑問を留保せざるを得ない(それが適正数であるとすれば、逆に、当初最終正会員数を一〇〇〇人と設定した根拠が問われざるを得ない。)上、仮に平日会員権が相当数含まれたとしても、施設としてのメンテナンス、サービス等ゴルフ場全体の機能、格、利用価値、会員権の資産価値等の低下をもたらしたであろうことはおよそ否定し難い事実であって、会員数が数千名に及んだことは、前判示のように会員数を大幅に上回らない範囲に留まらず、かつ、それによって本件クラブのプレー環境の悪化等がもたらすものとしてその経営者の債務不履行を構成し、会員契約の解除原因となるものと解される(仮に、被告野間口供述中の一八〇〇名を基準としても大幅な増加である蓋然性は否定されない。)。

(四)  そうすると、原告らの本件解除は、有効にされたものというべきであり、フォーラムは、原告らに対し、本件契約(一)及び本件契約(二)の各解除に基づき、原状回復義務を負うものと認められる。

(五)  原状回復の範囲については、原告らは入会金をも返還すべきであると主張するが、ゴルフクラブの会員契約は、継続的契約であり、本件にあっては、原告らは、解除までの間数年にわたり本件ゴルフ場でプレーしていることが認められ(甲一二、一三、弁論の全趣旨)、このような場合においては、会員契約を将来に向かってのみ解除することができるものと解すべきであるから、入会金についてはその返還を求めることはできないというべきである。

2(一)  次に、秩父開発についてみるに、本件営業権は、本件譲渡(一)及び本件譲渡(二)により、フォーラムから秩父開発、秩父開発からインタータッチに移転したものであるところ、証拠(甲一八)及び弁論の全趣旨によれば、本件譲渡(一)は、フォーラムが秩父開発に対し営業権及び営業用動産を譲渡し、秩父開発との間でゴルフ場及びクラブハウスについて賃貸借契約を締結した上、フォーラムの従業員は秩父開発が引き続き雇用するとされていること、本件クラブの各会員の会員権は、何ら得喪、変更等がなく、これを譲受人からみれば営業的利益を継承する側面を有するものであり、したがって、ゴルフ場経営という営業目的のため組織化され、一体として機能する財産を譲渡し、これによって、ゴルフ場経営という営業的活動の大部分を承継させるものであるから、いわゆる営業の譲渡に該当するものと認められる。

なお、証拠(甲一六)及び弁論の全趣旨によれば、本件譲渡(一)後、本件ゴルフ場の従業員について、フォーラムからの出向者とする取扱いがされ、フォーラムとの間の雇用契約等が承継されず、本件クラブの従業員の中にはフォーラムから給与を受けるなどしていた者がある様子がうかがえるものの、従前の従業員がそのまま勤務を継続した点にかんがみれば、右の点は、本件譲渡(一)が営業の譲渡に当たるとの認定を左右するものではないというべきである。

また、被告野間口供述中には、買戻条件付で営業譲渡をしたとする供述部分があるほか、被告フ社破産管財人の破産者フォーラムの破産手続における第一回債権者集会における報告資料(乙イ一)には、本件ゴルフ場施設についての賃料が現実に授受された形跡がないとの記載があるが、これらの点は、本件譲渡(一)に他の目的が混入していたことを示すものではあるが、それ故に営業譲渡としての実体がなかったことの徴表であるとはいえない。

(二)  右のように、本件譲渡(一)が営業の譲渡であるとすると、秩父開発は、本件クラブの各会員との間の会員契約上の地位を当然に承継するものではないと解され、したがってまた、会員、あるいはフォーラムの債権者等に対する関係においては、秩父開発は、当然には債務者とはならないというほかない。そして、被告野間口供述中には、本件譲渡(一)に際し、フォーラムと秩父開発間で秩父開発がフォーラムの債務を引き受ける話合いがされていないとする供述部分があることに照らし、秩父開発がフォーラムの債務を引き受けたとは認められず、他に会員契約の契約上の地位の譲渡がされ、又は秩父開発がフォーラムの債務について併存的引受けをしたことを認めるに足りる十分な証拠は見出されない(原告らは、フォーラムが重畳的営業譲渡をした旨主張するが、そのような営業当事者を複数化する措置がされたことを認めるに足りる的確な証拠は見出されない。)。

(三)  しかしながら、秩父開発は、本件ゴルフ場の名称(ザ・フォーラムカントリークラブ)を継続して使用し、その営業を行ったのであるから、商法二六条一項の類推適用により、フォーラムの営業によって生じた債務について、秩父開発は、フォーラムの営業によって生じた債務について弁済の責任を負うものと解するのが相当である。

すなわち、一般に、ゴルフ場の経営については、経営者の商号よりは、当該ゴルフ場又はそのゴルフクラブの名称が使用され、その会員や取引の相手方もその名称使用者が営業主体と理解するのが通常であると考えられ、右名称によって営業の主体が表示されているものと解される。そうすると、商法二六条一項の債権者保護の趣旨にかんがみ、商号そのものではなくとも、営業上使用される名称が営業の主体を表示するものとして機能している場合には、同項を類推適用し、名称を続用した営業の譲受人の弁済義務を認めるのが相当であり、本件にあっても、「ザ・フォーラムカントリークラブ」の名称を続用した秩父開発について、同項が類推適用されると解される。

(四)  そして、同項にいう「営業ニ因リテ生ジタル債務」とは、営業上の一切の債務であり、同項の趣旨にもかんがみるときは、取引上の債務に限らず、取引上の契約の解除による原状回復義務にも及ぶと解される。

もっとも、本件契約(一)及び本件契約(二)の解除の意思表示は、本件譲渡(二)の後にされたものであるから、原状回復義務が具体化した時点は、秩父開発が既に本件クラブの営業をしなくなった後であるが、預託金返還債務自体は当初から存していた債務であり、据置期間の満了後その履行期限が到来するものであるから、会員契約の解除によってその履行期の到来が当初より早まったにすぎず、法律上は原状回復義務の一内容として位置づけられるものであるとしても、それ故に預託金の返還義務を免れることになるものではないと解される。

なお、本件譲渡(一)の契約書(甲一八)四条において、フォーラムが「営業譲渡日の前日である平成5年12月14日までに負担している責務については」フォーラムが「全ての責任を負うものとし」、秩父開発「に対して請求があった場合は」フォーラムの「責任において処理するものとする」と規定されているが、右は、対内的な債務負担を定めたにすぎないと解すべきである。

3  以上の検討を総ずると、原告らがフォーラムに対し会員契約の際に支払った各預託金は、本件契約(一)及び本件契約(二)の各解除によりいずれも返還されるべきであるが、各入会金は、返還の対象にならないから、

(一) 原告らの被告フ社破産管財人に対する請求は、いずれも理由がなく、

(二) 原告らの被告秩父破産管財人に対する請求は、原告らが秩父開発に対し預託金返還請求権(原告内山については一三五〇万円、原告会社については二三〇〇万円)を有することの確定を求める限度でそれぞれ理由がある。

三  争点3について

1  前記第一の一の判断の前提となる事実、証拠(甲三から九まで、一〇の一から一〇まで、甲一二から一八まで、乙イ一から五まで、乙ニ三、四、被告野間口)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる(一部に前記第一の一の判断の前提となる事実の再摘示を含む。)。

(一)(1)  被告野間口は、昭和六〇年ころ、本件ゴルフ場の開発を手掛けていた太田開発株式会社の全株式を買い取ってこれを開発することを計画し、自己が経営するオービットインターナショナル株式会社において右会社の全株式を買い取り、同年六月一七日、フォーラムを設立して代表取締役に就任し、その開発を進めた。

(2)  フォーラムは、資本金一億一〇〇〇万円(五万円の発行済み株式が二二〇〇株)であり、その株主構成は、被告野間口及び関連会社であるオービットインターナショナル株式会社である。

(二)(1)  フォーラムは、平成元年一〇月、本件ゴルフ場を仮開場し、平成三年一一月一日、「ザ・フォーラムカントリークラブ」の名杯で正式に開場した。

(2)  また、フォーラムは、預託金として平成四年三月末日ころまでに約二一〇億円を集めた(ただし、その後、額が増加し、同社の破産手続における預託金の破産債権届出額は、平成九年三月一〇日時点の集計完了分約二六四・五億円である。)。

なお、本件ゴルフ場については、敷地のおよそ半分程度が借地であり、フォーラム所有地及びクラブハウスには、東銀リースが六〇億円の抵当権を有していたほか、複数の業者が根抵当権の設定を受けていた。

(3)  本件ゴルフ場の経営は、正式開場後三年間に次のように推移した。

ア 平成三年度 入場者 三万四〇〇〇人強

売上 一〇億四〇〇〇万円強

イ 平成四年度 入場者 三万九〇〇〇人強

売上 一二億八〇〇〇万円強

ウ 平成五年度 入場者 四万二〇〇〇人弱

売上 一一億三〇〇〇万円弱

(三)(1)  被告野間口は、フォーラムを持株会社として、ゴルフ事業関係、不動産管理関係、飲食業関係など一〇社余りの関連企業でフォーラムグループを形成し、フォーラムが本件クラブの会員から集めた預託金、本件組合からの借入金等を用いて、その傘下企業に事業資金を貸し付けるなどの方法により事業の拡大を図った。

(2)  フォーラムは、本件ゴルフ場の仮開場後、群馬県吾妻郡高山村において群馬ゴルフ場の開発に着手し、関連企業であるフォーラム開発株式会社(以下「フォーラム開発」という。)にこれを担当させ、フォーラムを通じて資金を投じた。

しかしなから、フォーラムは、群馬ゴルフ場の開発に二〇億ないし三〇億円の多額の資金を必要とし、本件クラブの会員から受託した預託金やフォーラムにおいてノンバンクや高利の貸金業者等から借り入れた多額の金員をフォーラム開発に貸し付けるなどしたため、フォーラムの平成三年三月期の借入残高は約一四〇億円に達した。

(3)  一方、フォーラムは、平成元年ころ以降、アメリカ合衆国ロサンゼルスでゴルフ場及び住宅地建設に関連会社ザ・フォーラムカントリークラブ・オブ・カリフォルニアを通じて約三五億円を投じたほか、平成四年二月ころ、睦商事から、同社がアメリカ合衆国ニューヨークで開発を手掛けたが資金繰りの悪化により工事を中断していたゴルフ場「マンハッタンウッズゴルフクラブ」の買取方を打診され、東京協和から買収資金として三〇億円の融資を受け、関連会社のフォーラム販売株式会社を通じ、右ゴルフ場を買い取ってその開発を進めた。

(4)  しかし、これらの事業は、いずれも頓挫し、投下資本を回収するに至らなかった。

(四) フォーラムは、本件ゴルフ場の開場後、更に市中の金融機関から融資を受け、右のようにこれを海外投資、ゴルフ場開発に回すなどして借入を増加させた一方、平成三年ころ以降のいわゆるバブル経済の崩壊等の影響により、群馬ゴルフ場の会員権販売による預託金収入が伸び悩び、二信組からの借入残高も限度額を大幅に超過して新規貸付けを受けることができなくなるとともとに、平成四年ころ以降は銀行等の市中の金融機関からの借入れが困難となり、金融業者から高利の融資を受けるようになり、次第にその額が増加し、資金を借り入れてはこれを高利の借入金の返済に充てることを繰り返さざるを得ない事態に追い込まれるなどしたため、資金繰りは極度に悪化し、被告野間口は、資金調達に奔走する毎日を送った。

(五) フォーラムは、平成五年秋ころ、高利の負債処理に難渋し、二信組の理事長である高橋治則に対し、東京協和から約三〇億円の融資を受けたい旨打診したが、直接融資を受けることは能わず、新たに設立された秩父開発を通じて本件譲渡(一)の形式を用い、いわば迂回融資の形式で資金を得た。

(六)このような経緯を経て、フォーラムの借入残高は、平成五年三月末以降約一五〇億円を超え、以後も増加し、平成八年三月時点で借入残高は約二二九億円となり、この間の平成二年三月期から平成六年三月期までの五年間の支払利息は、約八五億円に達した。

一方、この間のフォーラムの収支については、本件ゴルフ場本体の売上は、年間一二億円から一八億円程度で推移したが、平成二年三月期に経営損益が約七・八億円の赤字となり、平成五年三月期には約二・六億円の営業利益があったが、毎年数億円の赤字が続き、当期未処理損失については、平成四年三月期が約一四・五億円、平成五年三月期が約一八億円、平成六年三月期が約一九・四億円に達し、フォーラムは、平成七年三月三〇日、二度目の不渡りを出し、同年四月四日、銀行取引停止処分を受けて事実上倒産した。

2(一)  以上の事実からすると、フォーラムは、多額の負債を抱えつつ、本件ゴルフ場のほかに複数のゴルフ場開発を並行して手掛けるなどして事業の拡大を図り、いわゆるバブル経済の崩壊後においても、積極的な不動産投資及びゴルフ場開発投資をしたが、開発が頓挫し、それらがいわゆる不良資産化したものであること、事業資金の調達についても、その調達先及び融資内容の詳細は確定し難い部分が少なくないものの、事業計画に裏打ちされた市中の金融機関からの借入れによるものではなく、高利の金融業者からの借入れが相当程度あり、利息及び借入れの返済に負われ、返済資金の手当のために新たな借入をするなどして負債が雪だるま式に膨れ上がったものと推量される。

また、本件ゴルフ場の投下資本についても、被告野間口自身、その本人尋問において、開発に受託した約二一〇億円の預託金に匹敵する金額を投じ、運営に要する資金の余力自体が乏しかったことを自認する供述をしているほか、フォーラムの破産管財人の第一回債権者における報告資料(乙イ一)においても、バブル経済期の消費水準による高額の利用料金を念頭に置いた設備投資がされているため、バブル経済崩壊後の価格破壊の趨勢の中で本体の本件ゴルフ場の営業収支においても苦戦を強いられてきたものと思われるとの指摘がされていることが認められ(乙イ一)、右のような状況にこの点を併せ勘案すると、本件ゴルフ場について健全経営を実現し、負債処理を推進することはもちろん、多額の負債を抱えつつその事業を維持することは容易ならざる状況に至っていたものと認められる。

(二)  さらに、フォーラムが担保に供した本件クラブの会員権については、その総数は確定し難いものの、被告野間口は、その本人尋問において、東銀リース、東京協和信用組合、他の金融機関に対し二〇〇〇枚以上の会員権を担保として預託した旨自認する供述をしており、前判示のとおりフォーラムの会員数が数千人にも上ったことを併せ勘案すると、右供述にも信憑性があると考えられる。

3(一)  そうすると、フォーラムは、フォーラムグループの中核企業にあり、関連企業の中には飲食業等により利益を上げていたものもあったことがうかがえる(被告野間口供述、弁論の全趣旨)けれども、同時に国内国外の複数のゴルフ場開発を手掛け、かつ、本件クラブの預託金をもその開発資金に注ぎ込み、なお相当期間これを継続した経営判断については、前判示1のような平成三年以降の本件ゴルフ場の収支状況に照らし、その当否を問わざるを得ない。

(二)  この点につき、被告野間口は、東京地方裁判所平成七年(刑わ)第一八七〇号事件(以下「別件」という。)における被告人尋問(乙ニ三。以下「別件野間口尋問」という。)及び本件の本人尋問において、フォーラムの関連企業タスコ開発が利益を出していた旨、本件ゴルフ場の入場者は年間五万人まで見込まれ、右肩上がりの業績が期待することができ、また、市中の高利の約三〇億円の負債を整理し、金利の低い借入れにすれば事業を継続した上、借入金を返済していけるとの認識であった旨、本件ゴルフ場の資産価値は八〇億円以上あり、競売に付されれば一〇〇億以上の値がつくことは確実である旨の各供述をしている。

(三)  たしかに、昭和六〇年代から平成二年ころまではいわゆるバブル経済期にあり、右肩上がりの成長が半ば当然視されていたことは事実であるが、平成三年ころ以降のバブル経済の崩壊後は、そのような大幅な成長を織り込んだ事業展望が妥当性を有しないものとなったことはほぼ周知の事実であり、被告野間口の右のような判断が経営上の判断の過誤の類にとどまるものといえるかは疑問であり、高利の借入にまで依存せざるを得ない状況に陥ったことを勘案すれば、むしろ新規事業の達成見込みやその期間、必要資金量等についての調査が不十分であったと推認すべき余地を否定することができない。これに対し、河野は、別件に係る捜査段階における検察官による取調べにおいて、フォーラムの平成四年度の収支実績表から、ゴルフ場の経営のみであればかろうじて黒字に持っていけるが、ゴルフ場の売上では借入金の返済をすることはできないと判断された旨供述している(甲一四から一七まで)ところ、右判断は、前判示1のようなフォーラムの収支の推移に照らし、肯認できる要素を含んでいると解される。

4(一)  また、本件クラブの多数の会員権が担保に供されたことについて、被告野間口は、別件野間口尋問及び本件の本人尋問において、いわゆる担保流れになり、会員権が流通すれば、借入金と相殺になるとともに、負債は金利負担のない預託金に変容し、また、名義変更料収入が増え、営業上プラスになり、経営を圧迫することなどあり得ず、右担保供与と経営悪化とは因果関係がない旨、また、会員権は、会員権市場において取引されるから、預託金の返還義務は現実化しない旨供述する。

(二)  しかしながら、同被告は、別件野間口尋問において、本件クラブの会員権の相場が平成五年又は六年当時約三〇〇万円、三五〇万円程度であることを自認する一方、時期は必ずしも明確ではないものの預託金額が六八〇万円であるとする供述をしており、右供述に従えば、担保に供した会員権が流通することにより三〇〇万円又は三五〇万円に満たない額しか借入金が減少しない一方、預託金返還債務がそれをはるかに上回る六八〇万円増加することになる。

また、預託金は、本来、ゴルフ場の建設費や運営費用に充てることを想定したものであるが、他の事業開発に投下し、あるいは借入金の返済に用いれば、本件ゴルフ場の事業の健全化や改善等経営資金として用いることができない金員であることに変わりはない上、大量の会員権が流通することにより会員数が本来の員数を大幅に上回るような事態になれば、会員権の価値の減退という負の要素がもたらされることになる。

したがって、これらの点を勘案すると、右の会員権の担保供与については、ゴルフ場の営業が健全に継続される限り会員権が市場を通じて流通し、預託金の返還が現実化することは少ないと考えられ、また、新会員の年会費、プレーフイー等の収益が増加することを考慮しても、軽視できない問題を含み、経営に充てる費用の捻出がおぼつかない状況にあっては、担保供与に伴う影響や波及への確たる対処が合理的な計算の基に想定されていたとは認め難い。

5  そして、ゴルフ場の開発経営は、大規模であり、専門的知識と多額の資金を要し、利害関係者も多数に上る上、長期にわたり安定的な経営を確保することがその事業の性格上本質的に要請されるものであるから、フォーラムの代表取締役であった被告野間口は、ゴルフ場事業の成否や将来の展望について十分な調査研究を遂げ、建設や運営に係る資金についても合理的な計算に基づく裏付けをもった計画を立て、かつ、時の経済情勢や時代の変化に即応して経営判断を行う義務を負うものと解される。

もちろん、事業の拡張や推進のための多額の資金を投下したがそれが失敗した場合に直ちにその職務執行が違法となるものではなく、また、時として窮地を乗り切るために採算を度外視した臨時の対応をとることが必要となる場合も存し、そのような場合の経営判断についての見込み違いなどについて責任を問われるゆえんはないと解される。

しかしながら、バブル経済の崩壊という多くの者にとって予期しない事態が生じたとしても、従前の事業拡大路線を継続しようとし、本件クラブの会員の預託金を他に投じるなどしたのみならず、資金に窮するや市中からの高利の借入に依存し、その返済のために新たな借入をするといった事態に陥ったことは、確たる事業の見通しのないまま事業の拡大と継続を図ったことが顕在化したものというほかなく、フォーラムの破綻の原因をひとりバブル経済の崩壊等外的要因に帰することはできないというべきであるのみならず、多額の融資についても、収益の圧迫要因となる高利の借入を上回る収益見込みがあり、当座の苦境を打開するための経営努力として是認すべき合理的裏付けをもってされたものとは認め難い。

しかるときは、被告野間口にあっては、その重大な過失により代表取締役としての職務上の義務を懈怠し、フォーラムの破綻をもたらしたものというべきであるから、商法二六六条の三に基づき、これによって原告らが被った損害を賠償する義務があると認められる。

6  そこで、損害について検討するに、フォーラムが破綻したことにより、預託金返還請求権は、回収可能性がほぼ失われたものと認められる。

この点について、フォーラムの破産手続においては、被告フ社破産管財人は、原告らの預託金について中間利息を控除せず全額について異議を述べなかったことが認められる(乙イ一、弁論の全趣旨)けれども、これらに対する配当の有無やその額については蓋然性をもって肯認すべき事情や証拠はこれを見い出すことができず、したがって、その全額が損害となるものと解するほかない。

なお、入会金については、前示二1(五)と同様の理由により、原告らにあってはその返還が予定された金員に該当するものではないから、損害になるとは認められない。

第四結論

以上の次第で、

一  原告内山の

1  被告フ社管財人との間で、同原告がフォーラムに対し、二五〇万円の破産債権を有することの確定を求める請求は理由がないからこれを棄却し、

2  被告秩父管財人に対する請求は、同被告との間で、同原告が秩父開発に対し一三五〇万円の破産債権を有することの確定を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、

3  被告野間口に対する商法二六六条の三に基づく損害賠償請求は、預託金相当額一三五〇万円及びこれに対する損害発生の後の日であり、訴状送達の日の翌日である平成八年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、

二  原告会社の

1  被告フ社管財人との間で、同原告がフォーラムに対し、四一二万円の破産債権を有することの確定を求める請求は理由がないからこれを棄却し、

2  被告秩父管財人に対する請求は、同被告との間で、同原告が秩父開発に対し、二三〇〇万円の破産債権を有することの確定を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、

3  被告野間口に対する商法二六六条の三に基づく損害賠償請求は、預託金の相当額二三〇〇万円及びこれに対する損害発生の後の日であり、訴状送達の日の翌日である平成八年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条本文、仮執行宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 内堀宏達)

別紙<省略>

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